庚申塔物語

あとがき

あとがき

早いもので、私が多摩地方の庚申塔を調べ始めてから35年が経った。初めの4年間は熱中 して各地を廻ったが、昭和40年に刊行した『三多摩庚申塔資料』で一段落してからは、冷め た時期にはいった。

一時期は多摩石仏の会や庚申懇話会の例会にでても、メモも取らずに庚申塔をただ眺めてい るだけだった。当時は、ほとんど単独で調査することもなかった。庚申塔調査が一区切りした 機会に、獅子舞の興味が移ったことも見逃せない。それに仕事の方も忙しくなって、調査に時 間を割けなくなったこともある。

昭和47年に『青梅市の石仏』に関係してからは、ただ庚申塔だけを調べるだけでは済ま なくなった。いろいろな種類の石仏を調べることは、、また一方では庚申塔調査にも効果をも たらし、多摩地方の庚申塔をみる上でも反映した。それが後に『日本石仏事典』や『日本石仏 図典』、あるいは『石仏調査ハンドブック』や『石仏研究ハンドブック』の分担執筆に役立っ た。

これまで『三多摩庚申塔資料』の発行以来、平成6年に『東京多摩庚申塔資料』、翌7年に 『東京多摩庚申塔DB』を刊行して、多摩地方の庚申塔を広い視野でみられようになった。こ うした資料集の効用はいろいろあるけれども、一般の人たちには塔の資料の羅列で馴染みにく い。

多摩地方の庚申塔については、断片的に『庚申』『野仏』『日本の石仏』などに発表してき たし、『青梅市の石仏』『青梅市史』『秋川市史』『八王子庚申塔略史』『昭島市の庚申塔』 『国立の石碑・石佛』など、一つの市域の範囲ではまとめてきた。すでに庚申塔調査も四半世 紀を超えている。その後、新し資料も見つかっている。

そろそろ年貢の納め時でもあるので、多摩地方の庚申塔についてメモ書きでも残そうと考え た。そこで多摩地方の庚申塔全般について、ごく簡単にまとめるつもりで題名も『多摩庚申塔 夜話』として書きはじめた。書き進めるうちに項目も増えて、あれもを書かなければ、これも 書いておいたら方がよいと、当初50〜60頁の小冊子を考えていたが、実際は3倍以上に長 くなってしまった。しかし本書は、あくまでも仮決算のつもりであるから、いずれ本決算であ る『多摩地方の庚申塔』を考えている。

本書を書き始めてからこれだけのボリュームを1ヵ月足らずでまとめられたのは、これまで 『野仏』などの雑誌に発表したものをワープロに入力しておいたお陰である。一々、原本に当 たらなくてもワープロの画面上で資料の照合ができるから、原本を探す手間が省けて時間効率 がよかった。もしワープロが存在していなかったら、おそらく本書も世にでなかったろう。将 来的にはハードデスク付のパソコンで入力するようになるだろう。

本書では誤りの箇所も多いと思われるし、洩れたものも多いので、ぜひともご指摘をお願い したい。

これまで多摩地方の庚申塔調査では、非常に多くの方々にご教示・ご協力いただいた。ここ でも、一々お名前を挙げてるべきであるが、あまり多いので氏名を省略させていただいた。末 筆ながら、一言お礼申し上げたい。本書がまとまったのも実に多くの方々のご教示やご協力の 賜物であるので、本書をもって少しでもお陰に報いたい。

改定版追記

自分で書いたものを自分で校正すると、文章がわかっているものだから、誤植があっても見 逃してしまう。この『多摩庚申塔夜話』も、発行前に校正したつもりであったが、刊行後に呼 んでみると、誤植があまりにも多かった。そこで誤植を正すと共に、一部を書き直したり、書 き加えて改定版の本書ができた。

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