庚申塔物語

庚申層塔

庚申層塔

私が『日本の石仏』第24号に発表した「関東庚申層塔仮年表」によって、 関東地方に分布する庚申層塔がどのような状態にあるのか、大体の傾向がうかがえる。

まず、分布の特徴は、群馬県、特に利根郡を中心として県北部に集中している。群馬以外では、東京と千葉に各1基の分布がある。 このうち東京の塔は、茶室の庭に置かれており、元からあったものではない。 千葉の1基は、外形上からも群馬とは系統を異にするから、東京の1基は、系統の同じ群馬から移された塔と推測される。

造立年代から庚申層塔を見ると、ほぼ庚申石祠と同じような傾向が見られる。 つまり、青面金剛が普及しない時期、庚申層塔の場合には、承応期から寛文期にかけての造立が多い。 そして青面金剛の刻像塔が各地で建てられるようになる元禄期より建塔が激減している傾向にある。

多摩地方にみられる庚申層塔は、次の1基である。 [表1]参照

表1.多摩地方にみられる庚申層塔
No.年銘西暦中尊塔形所在地備考
1明暦2年1656--層塔調布市深大寺元町2

先に東京に1基といったのは、1の明暦2年層塔である。層塔は5層で、台石2段の上に建っている。 総高は約250センチ、最下段の軸部は高さ36センチ、幅41センチ、奥行が41センチである。 ここの層塔の正面には合掌状のニ猿が浮き彫りされ、 右側面に「干時明暦仁年 丙申正月朔日」裏面に「菩提 衆祖二世安楽」、 左側面に「庚申供養 施主三十三人」と刻まれている。 その上の軸部は高さ36センチ、幅36センチ、奥行36センチで正面にニ鶏の浮彫り、 真ん中の層は高さ29センチ、幅33センチ、奥行33センチで正面に日輪の陰刻、 その上の層は高さ27センチ、幅三センチ、奥行30センチで月輪の陰刻、 最上層は高さ28センチ、幅27センチ、奥行27センチで「卍」の陰刻である。

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