庚申塔物語

四手の青面金剛

四手の青面金剛

青面金剛の像容として『陀羅尼集経』に説かれているものは、 ニ童子と四薬叉を伴なうニ鬼上に立つ3眼の4手像である。 詳しく4手の持物を示すと「一身四手、左辺上手把三股叉、下手把棒、右辺上手掌拈一輪、下手把羂索」である。

持物が儀軌の通りではないにしても、4手の青面金剛がみられるが、 中でも寒川町大曲・八幡神社の承応2年(1653)塔以来、 神奈川県下にみられるいわゆる大曲型4手青面金剛が著名である。 [表1]参照

表1.多摩地方にみられる4手の青面金剛
No.年銘西暦中尊塔形所在地備考
1元禄6年1693青面金剛笠付型八王子市東浅川町新地
2元禄7年1694青面金剛光背型昭島市大神町 観音寺
3元禄13年1700青面金剛自然石八王子市滝山町1天王社
4元禄X年--青面金剛笠付型八王子市犬目町西堀元禄6年
5元禄X年--青面金剛光背型羽村市羽東 禅林寺
6明和1年1764青面金剛笠付型小平市御幸町 海岸寺現亡
7天保9年1838青面金剛柱状型調布市国領町5 路傍
8年不明--青面金剛光背型檜原村千足 御霊檜原社

1の元禄6年塔は、児童公園の隅にある小祠内の左端に安置されている。 正面の上部に「バン」の種子を刻み、その下に上方手に蛇と矛を持ち、 下方の両手が腰に手を当てた4手像、下部に横向きの三猿を浮彫りする。 主尊に比べて三猿が大きい。右側面に「庚申供養為二世安楽也」、左側面に元禄の年銘がみられる。

2の元禄7年塔は、日月と三猿を4手像の上下に配し、「庚申供養」の銘を刻む。

3の元禄13年塔は、頂部に「バン」の種子、その左右に日月、中央には第1手に剣と宝珠、 第2手に蛇と羂索を持つ4手立像、下部に正面向きの三猿を刻む。 「庚申待 横山村 道行十五人」の造立である。

4の元禄X年塔は、側面の剥落が進んでいて「元禄」と他に数字がわかる程度であるが、 並んでいる寛政6年塔から元禄6の造立と推定される。 1と同じ像容の上方手に蛇と矛を持ち、下方の両手を腰に置く4手像で、下部に横向きの三猿を浮彫りする。

5の元禄X年塔は、一鬼と三猿を伴う4手像で「庚申供養為二世安楽菩提」銘がある。

6の明和1年塔は、ニ鬼上に立つ4手像で、現在は失われた。

7の天保9年塔は、日月・一鬼・三猿を伴う4手像で、 「天下泰平国土安穏 日月清明風雨順時五殻豊饒萬民快楽 講中安全如意吉祥」の祈願銘がある。 台石には上給村・下布田村・上布村・国領村の4村の施主銘があり、「押立村 石工 定五郎」の石工銘がみられる。

8の年不明塔は、4手像に合掌のニ猿とニ鶏を浮彫りしている。銘文は一切ない。

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