庚申信仰は、猿や北斗信仰の関係から山王信仰との結びつきがみられる。 すでに中世に山王二十一社種子を刻む庚申板碑がみられるし、 埼玉県八潮市井草・円蔵院にある寛永16年(1639)塔には山王二十一社種子がみられる。 多摩地方の庚申塔の中で山王銘があるものを次に示す。 [表1]参照
No. | 年銘 | 西暦 | 中尊 | 塔形 | 所在地 | 備考 |
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参 | 永禄2年 | 1559 | (文字) | 懸佛 | あきる野市牛沼 秋川社 | 亡失 |
参 | 寛文4年 | 1664 | (文字) | 燈籠 | 清瀬市中清戸 日枝神社 | 三猿 |
1 | 貞享1年 | 1684 | 弥陀定印 | 笠付型 | 八王子市山田町 山田会館 | 三猿 |
参 | 宝永7年 | 1710 | 三猿 | 燈籠 | 清瀬市中清戸 日枝神社 | 三猿 |
2 | 正徳2年 | 1712 | 青面金剛 | 光背型 | 町田市小山町 中村路傍 | 三猿 |
参 | 寛政4年 | 1792 | (文字) | 燈籠 | 八王子市下恩方町 稲荷社 | |
参 | 慶応1年 | 1865 | 山王権現 | 柱状型 | 青梅市柚木町 即清寺 |
参の永禄2年懸佛には、「南無山王二十一社」の銘がみられる。
参の寛文4年燈籠は、竿石に「奉納山王御寳前諸願成就為也」の銘があり、 下部に三猿を浮彫り像がある。
1の貞享1年塔は、弥陀定印を主尊とした塔で下部に三猿がみられる。 「山王大権現」の銘がみられるから、主尊の弥陀定印を山王権現と考えていたのだろう。
参の宝永7年燈籠は、参の寛文4年燈籠に近くにあるもので、 「山王御宝前 奉造立石燈籠諸願成就」とあり、下部に三猿を配す。
2の正徳2年塔は、日月と三猿を伴う合掌6手の青面金剛像で、 頭の両脇には「奉建立」「山王権現」とあり、山王権現と考えて青面金剛を造立している。
参の寛政4年燈籠は、竿石に「獻 青面金剛 山王大権現」と刻まれている。
参の慶応1年塔は、山内新四国八十八箇所霊場を造った時に建てられたもので、 右側面にはゆかりある弘法大師と興教大師の銘と像、 左側面には「青面金剛」と「山王権現」の尊名、その下に青面金剛立像と山王権現座像を線彫りする。
この他にも多摩地方には、庚申信仰と関係ない山王権現の石造物がみられる。 たとえば檜原村の場合は、小岩・山王社にある宝暦9年(1759)造立の「奉納山王大権現」灯籠、 上元郷・山王社にある明和8年(1771)の「奉納山王大権現」笠付型塔、 出畑・山王社にある安永6(1777)年の「山王権現御宝前」灯籠がある。 福生市では、熊川の森田家にある寛政6年(1794)の「山王大権現」柱状塔がみられる。