庚申塔物語

三猿の雌雄

三猿の雌雄

三猿は、庚申塔のシンボル的な存在である。 庚申塔を知らなくても、見ざる・聞かざる・言わざるの3匹の猿がついている石塔だといえば、あれかと思いだす方もあろう。 山中共古翁が『共古随筆』で庚申塔を扱った1章を「三猿塔」と名付けたことからも、庚申塔と三猿の関係がうかがえる。

庚申塔の魅力は、主尊像や像容の変化、あるいはさまざまな塔形もさることながら、三猿の多様な姿態が見逃せない。 三猿の姿態は、時代によって変化があるし、中には雌雄の明らかなものもある。 こうした庚申塔の猿の姿態の変化を追って、写真に撮り、相互に比較するのも面白いものである。

足立区加賀2の万治1年塔や江東区亀戸3・龍眼寺(萩寺)の万治2年塔には、 すでに雌雄の性別のある猿がみられるが、多くの庚申塔に見られる猿は、ほとんどが雌雄が不明である。 しかし少ないながらも、次の表にある塔のように、雌雄の判別ができる三猿がみられる。 [表1]参照

表1.多摩地方にみられる三猿の雌雄
No.年銘西暦中尊塔形所在地備考
1延宝2年1674青面金剛笠付型府中市南町6 郷土の森剣人6手
2享保7年1722青面金剛駒型多摩市乞田剣人6手
3天保4年1833(文字)柱状型立川市高松町2-39

1の延宝2年塔は、美好町3丁目の浅間神社境内にあったものが宮町の郷土館に移転し、さらに現在地に移された。 猿が向かって右から雄・雌・雄の順に並んでいる。

2の享保7年塔は「奉信敬青面金剛轉禍為副祈所」の銘文のある塔で、 猿が右から雄・雄・中性の順である。

3の天保4年塔は、正面に主銘の「庚申塔」と刻む塔で、雌・雌・雄と順で猿が並んでいる。

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