富士山は孝安天皇の庚申年に開かれたもので、富士の御師は庚申年を「御縁年」と称して富士登山を勧めたり、 庚申の掛軸を発行した。 神奈川県藤沢市片瀬2丁目泉蔵寺入口には、富士の御師が発行している寛政12年(1800庚申)の富士山升形牛王の掛軸を塔面に写した享和4年(1804)の柱状型塔がみられる。
こうした富士と庚申の結びつきから、庚申塔に富士の山形を刻む例がある。 多摩地方では下表の2基がみられる。 [表1]参照
No. | 年銘 | 西暦 | 中尊 | 塔形 | 所在地 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 万延1年 | 1860 | 青面金剛 | 柱状型 | 国分寺市並木町 妙光寺 | 剣人6手 |
2 | 年不明 | -- | (文字) | 自然石 | 八王子市越野 公園角 |
1の万延1年塔は、剣人6手の青面金剛を主尊とする塔で、上部に富士の山形を線刻する。
2の年不明塔は、主銘が「庚申塔」で、やはり上部に富士を線彫りする。