庚申塔物語

念佛供養と庚申塔

念佛供養と庚申塔

前項の「石橋供養と庚申塔」でみたように、 青梅市藤橋の寛政5年塔や同市勝沼の文化5年塔のごとく石橋供養と念佛供養とが結びついた多岐にわたる交流を含んだ、 念佛供養や念佛講と関係する庚申塔がみられる。 それらを挙げるとの19基がある。 [表1]参照

表1.多摩地方にみられる念佛供養と庚申塔
No.年銘西暦中尊塔形所在地備考
1寛文4年1664地蔵光背型稲城市東長沼 常楽寺
2元禄15年1702六地蔵石幢町田市野津田町丸山路傍三猿
3宝永5年1708青面金剛板駒型小金井市前原町 墓地合掌6手
4宝永7年1708青面金剛笠付型八王子市並木町 長安寺合掌6手
5享保8年1723地蔵菩薩丸彫町田市南成瀬台  石
6享保19年1734青面金剛笠付型八王子市上恩方町川井野合掌6手
7元文4年1739青面金剛駒型八王子市上壱分方町大柳合掌6手
8宝暦10年1760青面金剛駒型八王子市寺田町上寺田合掌6手
9明和3年1766青面金剛柱状型奥多摩町氷川 庚申尾根合掌6手
10天明4年1784青面金剛笠付型日の出町大久野 宝鏡寺合掌6手
11寛政2年1790青面金剛笠付型八王子市椚田町合掌6手
12寛政5年1793(文字)柱状型青梅市藤橋 宝泉寺石橋供養
13文化2年1805青面金剛笠付型府中市白糸台(現亡)合掌6手
14文化5年1808(文字)自然石青梅市勝沼 乗願寺
15文化6年1809(文字)自然石八王子市大楽寺町神戸
16文化10年1813(文字)自然石府中市小柳町 溝合神社
17文政1年1818青面金剛光背型国分寺市恋ケ窪合掌6手
18文政2年1819(文字)自然石青梅市青梅 天ケ瀬
19弘化2年1845青面金剛笠付型稲城市矢野口 庚申祠剣人6手

1の寛文4年塔は、地蔵の立像で「念佛供養想衆十人 庚申供養想衆七人」の銘が刻まれている。

2の元禄15年塔は、六地蔵と三猿を浮彫りする単制石幢で、 六字名号と「奉造立地蔵尊為二世安楽 念佛講中拾七人 庚申講中六人」の銘がみられる。

3の宝永5年塔は、合掌6手青面金剛を主尊として線彫りした刻像塔で、 「奉造立庚申并百万遍念殊供養所」の銘文を刻む。

4の宝永7年塔は浮彫りの青面金剛像の塔で、正面右側に「奉納念佛同行廾五人」の銘があり、 裏面には塔を移動した事情を記す追刻がみられる。

5の享保8年塔は、丸彫りの地蔵が立つ台石に「奉供養念佛庚申為二世安楽」の銘があり、 東雲寺住職若山の名が記されている。

6の享保19年塔には、「念佛供養」の銘が刻まれている。

7の元文4年塔には、「念佛講中」の銘がある。

8の年宝暦10塔は庚申講の造立であるが、 笠部が欠損したので文政5年に「上寺田村念佛講中三十一人」が再建した。

9の明和3年塔には「日待念佛修行講」、10の天明4年塔には「念佛講中」、 11の寛政2年塔には「二軒在家 女念佛講中」、15の文化6年塔には「奉念佛供養往来安全」、 17の文政1年塔には「恋ケ窪念佛講中」、19の弘化2年塔には「女念佛講中」(以上の塔は青面金剛の刻像塔)の銘がある。

12の寛政5年塔は「大青面金剛」の文字塔で「石橋七ケ所建立供養」と「願主念佛講中 助力女念佛講中」、 13の文化2年塔は刻像塔で「庚辛講石橋供養塔」と「念佛講中」、 14の文化5年塔は「庚申塔」で「石橋供養」と「寒念佛 助力念佛 講中」、 16の文化10年塔は「庚申石橋供養塔」で「念佛講中 庚申講中 石橋講中」と刻まれている。 12から16は、石橋供養と念佛講との結びついた庚申塔である。

18の文政2年塔は「庚申塔」の主銘で「天ヶ瀬田向念佛講中」の銘がみられる。

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