清水長輝氏(故人)は、昭和34年に大日洞から『庚申塔の研究』を出版された。 私がこの本を神田の古書街で買った当時はまだ定価の800円以下であったが、 庚申塔の研究者が増加するにつれて古書価が高まり、1冊が数万円もした時期があった。 そうしたこともあって昭和63年には、名著出版から限定700部が5,800円で発行された。
この本と多摩地方の庚申塔の関係をみると、次の塔が記載されている。
年銘 | 西暦 | 特徴 | 塔形 | 所在地 |
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寛文5年 | 1665 | 「南無阿弥陀仏 甲辛供養」 | 板碑型 | 武蔵野市吉祥寺東町 安養寺 |
寛文8年 | 1696 | 2手青面・三猿 | 光背型 | 三鷹市中原4-16 庚申堂 |
元禄9年 | 1696 | 合掌弥陀「奉供養庚申」 | 笠付型 | 町田市木曽町 観音堂 |
明和4年 | 1767 | 「庚申塔」 | 灯籠 | 檜原村下元郷 路傍 |
文化14年 | 1817 | 「庚甲塚」 | 自然石 | 檜原村神戸 大橋付近 |
この『庚申塔の研究』は、私の庚申塔のバイブルともいうべき本で、庚申塔の調査研究の基本となった。 まだ調査塔数も多くない頃に、清水氏に西多摩に寒念佛と交流した庚申塔が多いと報告したところ、 丁重なご返事をいただいて恐縮した。 その後、年賀状の交換だけで、生前にお会いする機会がなかったのが残念であった。