庚申塔物語

小林太郎さん

小林太郎さん

小林太郎さんは、古い多摩石仏の会のメンバーである。 島田實さんの後を受けて第3代目の会長として選出され、会の運営に腕を振るわれた。

小林さんは、紳士服のオーダーを仕立てた職人であったから、手先が器用であった。 縣敏夫さん(後述)の影響を受けて、拓本から表装まで独学で習得し、数々の作品を手掛けている。 その成果の一端は、福生市教育委員会から平成1年に発行された『福生市石造遺物調査報告書』の134頁に 「拓本採取に新井利平、小林太郎、郷田知美が」にみられるように、調査の一員として加わっている。

昭和56年にこれまで『東村山市報』に発表した15編の石佛解説に加筆し、 調査資料を加えて『東村山の石仏と信仰』を多摩石仏の会から発行した。 これには、当然、「秋津神社と周辺の石仏」「野行の石燈籠と馬頭観音」「野口・猿田彦神社の庚申塔」で庚申塔にふれ、 各地区の項目で庚申塔の調査資料を載せている。 小林さんは、当時の熊木令次・東村山市長がその序文で書かれているいように、 東村山市立郷土館運営委員副会長として活躍された。

また小林さんは、書中の「あとがき」に、

各市町村の調査報告書を比較検討することが重要であることを知り、 それらの文献の入手に力をそそぐようになり、全国の石仏関係資料が3,000点をこえる数に達し、 身のおきばに窮するありさまです

と記されたように、石佛文献の収集に力を入れられていた。 私が『日本石仏事典』の「石仏関係参考文献目録」を作成できたのも、小林さんのご協力の賜物である。

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