多田治昭さんは20年来の多摩石仏の会の会員で、特に庚申塔に注目して調査されている。 多摩地方の調査を初めてまとめたのが『三多摩の百庚申塔』で、昭和56年のことである。 これについては後の『三多摩の百庚申塔』の項で詳しく述べることとして、 多田さんがこれまで多摩地方の庚申塔を調査・発行された個人誌や報告書を追ってみたい。
多田さんは、昭和58年10月2日に個人誌『多摩』の創刊号を出された。 これに「三多摩の庚申塔」として「福生市の庚申塔」と「羽村町の庚申塔」を載せている。 昭和59年2月26日刊行の第2号には、続編の「五日市の庚申塔」と「日の出町の庚申塔」が掲載されている。 残念なことに『多摩』は、昭和60年11月16日の第3号で終刊するが、 この号では「秋川市(現・あきる野市)の庚申塔」を報告している。
多田さんは、昭和63年に『東京都の庚申塔』を発行され、これを翌平成1年に増補し、 さらに平成5年に改訂版を刊行されている。 これには、当然、多摩地方の塔が多く含まれている。平成4年には、 秋川市・福生市・羽村市・五日市町・日の出町の庚申塔を扱った『西多摩の庚申塔 1』、 平成7年には『三多摩の庚申塔』を私家版で出した。
さらに現在は、「多摩の庚申塔」シリーズとして庚申塔の写真とデータを載せてまとめて、 随時、まとまった市町村から刊行している。 これまでに『清瀬市の庚申塔』『東村山市の庚申塔』『東久留米市の庚申塔』(以上平成7年刊)、 『田無市の庚申塔』『国分寺市の庚申塔』『国立市の庚申塔』『昭島市の庚申塔』『福生市の庚申塔』『あきる野市の庚申塔』(以上平成8年刊)、 『日の出町の庚申塔』『武蔵村山市の庚申塔』『羽村市の庚申塔』『東大和市の庚申塔』(以上平成9年刊)の13冊が発表されている。
多摩石仏の会では会誌『野仏』を昭和44年から年に1回発行している。 平成9年は、多摩石仏の会発足30周年に当たり、記念号の第28集を発行した。 多田さんは、『野仏』の第17集(昭和61年刊)に初めて「東京の地蔵庚申塔年表」を発表している。 これには、多摩地方の地蔵庚申塔も含まれている。 第25集(平成6年刊)の「最近の石仏」では、八王子市大塚の八幡神社にある昭和61年青面金剛塔と田無市西原にある平成3年文字塔の2基の庚申塔にふれている。 第27集(平成8年刊)に載った「多摩の猿田彦塔」は、多摩地方の28基の年表を掲げ、 改刻塔や刻像塔について詳述している。 第28集(平成9年刊)の「平成の庚申塔」には、東京都以外の庚申塔が記されている。
また多田さんは、庚申塔に刻まれた青面金剛を始めとして日月・鬼・鶏・猿・童子・薬叉の変化を写真で追ってアルバムにまとめられている。 多摩地方だけでなく、関東地方にも及んでいる。このアルバムが庚申塔の研究に役立つだろう。